「すずめの戸締まり」
公開からは遅れましたが、11月15日に観てきました
個人的にはすごく面白かったです 本当は感想記事を書くつもりはなかったのですが、残しておきたかったので書くことにしました
正統派ラブストーリー、王道なボーイミーツガールだった
動く椅子、湖の中に佇む扉、喋る猫等…日常にある物にファンタジー要素がちょこっと付加されてる!
日常に潜むちょっとした非日常感が良かった あくまでも現実世界の中でちょっとしたエッセンス的な非日常というカンジ
あと、とにかく映像が綺麗!
ストーリーのテンポがよく、飽きることなく最後までお話を楽しむことが出来ました。
この作品を観るのに注意がいる方といえば「震災」のショックから立ち直れていない方や、「震災」の描写を観たくない方でしょう けっこう震災を彷彿させるセンシティブな描写が多々あるので観ないほうが良いです
また、当記事はネタバレ感想となっておりますので、ご注意下さい
ネタバレ感想であると納得した方のみ記事を読み進めて下さい
あらすじ
物語のさわりのみ、記憶の限りあらすじを書きました
(あらすじ)
主人公:すずめは4歳の時に経験した大地震により母親を亡くし、母親の妹に引き取られる
時は流れ、宮城県の高校に通う高校2年生で17歳となったすずめは、登校中に、「扉を探している」という謎の青年「宗像 草太」に出会う。学校に登校したものの、草太のことが心配になったすずめはいても立ってもいられなくなり、廃墟に向かう。草太を追った先で、山の廃虚に佇む古い扉を見つける。湖の真ん中に佇む幻想的な扉に手を伸ばし、思わず開けてしまう
その際、扉に施されていた封印が解けてしまった そこで草太から「草太は“閉じ師”の末裔であること、扉を封印しなければ大地震が起こってしまうこと、“要石”という封印が施されていたこと」という衝撃的な事実を聞く 要石は猫に姿を変え、すずめと親し気な様子な草太に対して「お前邪魔」と言い放ち、草太を椅子の姿に変えてしまう
責任感が強く「閉じ師」である草太は椅子の姿のまま、要石を追い、災いを封印するために跡を追うと話す
一方、すずめは封印を解いてしまった負い目と椅子に姿を変えた草太を放っておけず一緒に日本各地にある扉を封印する旅に出ることとなる
かくして、草太を元の姿に戻すため、また、あちこちで開き続ける「後ろ戸」を閉じるためにすずめと椅子の草太の旅が始まる 旅の途中で色んな人々に出逢い、多くの時間を共有していく中で、2人は親交を深めていく
前半パートは行く先々の人に救われて笑いもあり、楽しい雰囲気
後半は主にすずめが草太と過去の自分を救う旅、かつ東日本大地震を彷彿とさせる描写がけっこうあるので重苦しいパートとなっています
U-NEXT加入している人は冒頭12分だけ視聴できるよ!
映画「すずめの戸締まり」の魅力に迫る
映画「すずめの戸締まり」の魅力について語っていきます!
純度高めの正統派ボーイミーツガールが良い!
新海誠監督といったら「王道系のボーイミーツガール」でしょう
新海誠監督のボーイミーツガールってどこか悲しい運命を辿るイメージがありましたが、今作は最後にしっかり会うことができていて安心しました(最近の映画は悲恋系ではなかったけど)
「特別な時間×同一目的」は親密度がゴリゴリに上がるエッセンス
高校2年生のすずめは真っ直ぐで危なっかしいヒロイン特有の巻き込まれ体質の女の子
大学4年生?の草太はどこか天然で真っ直ぐで危なっかしい自己犠牲精神を持つ青年
ちなみに「閉じ師」として生計を立てていくのは厳しいため、教員志望 2人とも基本的に温和な性格でのほほんとしているのでめっちゃ良いコンビだと思います
正直、すずめは草太とすれ違った瞬間に一目惚れしていると思いますが、草太は旅の途中で真っ直ぐで己を顧みない自己犠牲的な彼女に惚れています
しかし、友人芹澤曰く、「草太自身、自分を大切にするのが苦手なタイプ」とのことなので、2人とも似たもの同士なんだろうなと感じます
双子兄弟の前で喋る草太の存在を誤魔化すために「草太はあんまり賢くないから」と苦し紛れの言い訳をするすずめと本気のツッコミを入れる草太のやり取りがほっこりしたし一番良かったです
後半パートのすずめが制服に着替え、草太の靴を拝借してまた草太探しの旅に出るシーン
今まで自分が履いていた靴を脱ぎ捨てて、新しく草太の靴を履くシーンはストーリー的にそれしか方法がないとは分かっていながら、2人で困難を前向きに歩いていくというメッセージ性を感じてとてもワクワクしました
個人的に一番ぐっときたシーンは「後ろ戸」に入ったすずめが草太を救うシーン
草太目線でのすずめとの思い出想起シーンはあまりにも美しく、甘酸っぱく… 極め付けに心の中ですずめへの恋心を自覚する草太のセリフで2人の恋を応援したい気持ちでいっぱいになりました ベタだけど、ベタなのが良い
だってボーイミーツガールだもん
また、氷漬けになった草太の前の扉が開いてすずめが迎えに来る描写は分かっていても胸がじーんと熱くなりましたね 年の差があるものの、根っこが似ている2人なので穏やかな恋を育んでいって欲しいです
心の中のオタクが「キース!キース!」と幾度もの場面で叫んでいた
椅子と化した草太は何を思うか
正直、椅子と化した時間が長かったので椅子の草太の方が見慣れました!
実はこの作品、大半の時間を草太は椅子の姿で過ごしています
出会った瞬間、すずめは間違いなく草太に惹かれていましたが、椅子としての草太と過ごす時間の方が長いのです
椅子と化した草太は歩くと動画を撮られる等、移動するだけでも不自由があるし、3本の脚を器用に使いこなしてはいるものの、扉を閉じることができないので、完全に「閉じ師」として詰んでいます
一度眠ってしまうと目覚めが悪いという不吉な予感は散りばめられていましたが、草太目線で眠りにつくシーンで意識が深いところまで潜っていき、もう二度と戻れないのでは?という草太の不安を視聴者もまた同じ目線で味わえる描写がマジで怖かった
あの精神世界の奥深くに沈んでいく演出、本当にすごかったです あれがあったからこそ、後半パートが活きてくる
だからこそ、キスで起こしてくれたすずめちゃんを草太目線で見た時「救われた」感覚になりました
草太の回想シーンで現れるすずめちゃんはひたむきでただただ美しい…
最初はぎこちない動きだったけど、廃遊園地ではめちゃくちゃ動きが軽くて「体が椅子に馴染んできた!」等不安になることを言っていた草太は要石の役割を押し付けられ、最終的にマジの無機物と化す その描写が震えるほど怖かった
【余談】
閉じ師って人々に知られてはいけない職業というニュアンスを感じたため、マジでどうやって生計を立てられるのか謎、交通費やばそうだし赤字経営となってる 草太が損切りした瞬間に世界が終わるのやばいなと感じた(マジレス)
とにかく映像が綺麗
新海誠監督といえば、背景の美しさだと思います 特に「水の描写の美しさ」で右に出る者はいないのでは?
予告画像から拝借しましたが、全てにおいて、どこを切り取ったとしても、めちゃくちゃ映像が綺麗ですよね
作中では禍々しい廃墟が舞台となるのですが、廃墟ですら「寂しいけど、美しい」と感じてしまう技量に圧巻
普段通る駅とかもすごい綺麗に描写されていてただただ圧巻されました
旅先での出会い
旅の途中で出会った人々の人柄もこの映画の魅力の一つだと思います
すずめが出会うのは草太だけではありません
今回の旅の中で出会った「千果」「ルミさん」 彼女らはお別れする際にすずめに「アイテム」を託します
千果からは「制服じゃ目立つでしょ」と私服と草太持ち運び用のバッグ、ルミさんからは帽子と抱擁を貰います 思えばダイジンを追って愛媛行きの船に成り行きで乗ってしまったため、すずめは無課金ユーザーのような心許ない装備しかありませんでした 旅の途中で出会った人に施され、アイテムをゲットするのなんかRPGみたいで良いなぁと思いました
最後に出会った芹澤君からは「環さんと本音で話せるようになるきっかけ」を貰うことができました
芹澤君、マジであんた良い奴すぎるよ…
芹澤朋也という男
「ビジュアルが好み×CV.神木隆之介」なのがやばかった
かなりヤンチャな格好しているけど、実はめちゃくちゃ良い人かつ教師志望というキャラ付けなので、
ヤンキー効果でめちゃくちゃ株が上がった人物であった
後半の重苦しい家族パートで唯一の癒しを与えてくれる大事な存在
草太を心配し、家に来る、会って間もないすずめ家族に付き合って片道7時間以上も運転してくれた芹澤朋也こそ、
「作中一番のぐう聖」なのでは???
面倒見の良さがピカイチなので、絶対に良い先生になると思う
映画「すずめの戸締まり」を観て彼に人生を狂わされるオタクが今後次々と現れていくだろうと感じた
つばめと環さんが本当の家族になる過程
冒頭の食事シーン、すずめと環さんの会話がどこかぎこちなかった
また、LINEで連絡を取り合う2人だが、まったく話が噛み合わない
なんというか、すずめがタマキさんを鬱陶しがっておりそもそも会話が成立していない
芹澤からも「闇が深い家族」と表現されているこの2人
本音で話すことから逃げ続けてきた2人が成り行きで一緒に旅をすることになるけど、憔悴し切った環さんが最悪のタイミングですずめのことが迷惑だったと感情をぶちまけてしまう
ここは賛否両論あるシーンだと思うけど、自分としては環さんに深く同情してしまったのだ
理由として、姉を亡くし、姉の子であるすずめを引き取ると決意したのはおそらく20代だと思われる環さん
おそらく当時から現在までずっと色々な葛藤があったと思う
この物語では、姉の忘れ形見である未成年のすずめが特に理由の説明もなく、イキナリ放浪の旅に出てしまう
すずめにLINEを送っても中々返信がなく心配で仕事が手につかない
同僚から「口座の入出金履歴見てみれば?」と言われて見てみると宮城から愛媛、神戸、東京と大横断している形跡が確認できる どこにいるか聞いても泊まっている場所も教えてくれない
いや、これマジで心配になるだろ
心配でいてもたってもいられなくなり、東京まで駆けつけるとすずめから「頼んでない!」と言われ、終始ピリついた雰囲気となる すずめは当てつけのようにごはんも食べないし、極め付けに「環さんに引き取ってなんて頼んでない!」的なことを言われる 姉の忘れ形見のすずめを引き取り、大切に育ててきた自負があり、心配で心配で遥か離れた東京の街まで出てきた環さんにこの言葉をかけるのはあまりにも…
環さんは結婚とかいうステップをすっ飛ばして子育てしてきたわけだからその子供から今までの行いを否定されるってマジでつらいと思う
だからこそ、最悪なタイミングでつばめを傷付ける発言をした環さんを責める気持ちにはなれない
(そもそも先に環さんを傷付ける発言をしたのはすずめからだったし)
「大人だったら言ってはいけない」という意見もあると思うけど「子供でも言ってはいけない言葉」はあると思うのでおあいこだと思う
しかし、2人とも心の奥底に抱えていた闇を表出し、最終的に許し合うことができていたため、これから本当の家族へとなっていくことでしょう エンディングで今まで助けてもらった人々へのお礼周りのイラストをみるに2人とも心から笑うことができてました 良かった
ここの本音で語り合った後の謝り合うシーン好きなんですよね
本作は「戸締り」と称してカギを閉めるシーン、扉を開けるシーンが心理描写としても多々出てきます
それ故に、環さんとすずめがぶつかり合うシーンは絶対必要だったと思います あのエピソードがあったからこそこの2人も心のカギをお互いに開け合うことができ、どこかぎこちなかった2人の関係も本来あるべき姿に変化を遂げたのだと思います
「死」について深く考えるきっかけとなる
4歳の頃に被災し、母親が亡くなり、叔母である環さんに引き取られたすずめ
実は被災した時の記憶がすっぽり抜け落ちており、当時のことを覚えていないことが後半で発覚します
死ぬかもしれないのに何も考えずに付き合ってくれるすずめに草太は「君は死ぬのが怖くないのか?」と尋ねます
「怖くない」と答えるすずめですが、被災した地に赴き、自身の日記を見た時に当時の記憶を思い出します
死後の世界と言われている「常世」、すずめの目を通すと綺麗な光景となっていました
すずめは覚悟の元、命を投げ出す真似をしていたのではなく、死ぬ感覚を忘れてしまっていたが故に、命を顧みない行動することができていたのでした
母親の死、そして恋心を自覚して間もなく草太が死にかけてしまったこと、そして自身の日記を読んで「死への恐怖」を思い出すこととなります
その後のすずめの目に映る「常世」はおどろおどろしく、悲惨で絶望的な世界と変わります
その際、「死ぬのは怖い」とハッキリと言葉にすることができました
どこかこの世界を生きている感覚がなかったすずめが「生きること」を前向きに捉えた瞬間のようで観ていてこちらも救われた気持ちになりました
東日本大地震に触れている
この作品の肝は「地震(災害)」でしょう
忘れもしない、3.11を題材にする試みはすごいなと思いました
観る人によっては当時を思い出してつらい気持ちになってしまうかもしれません
個人的には地震を彷彿させるパートでは、主人公すずめは草太を救うために、前を向き続けていたからこそ、そこまで当時を思い出し、つらくなることはありませんでした
映像の神秘的さかつ、すずめや草太の前向きな気持ち、適度な作品のゆるさ(主に芹沢)があったため、重いテーマではあるんだけど、気持ち的にはあまり重苦しくなく観やすかったです
最後に過去の自分が観た女性は自分であったということに気付くすずめが、過去の全てを失った自分に対して「私は貴方の明日」というシーンがあります
震災後、絶望に打ちひしがれていた幼少期のすずめに「貴方にはたくさん愛してくれる人がいて、輝かしい未来が待っている(意訳)」と優しく語りかけるすずめの姿を観て当時の自分の苦しさや無念さが少しだけ救われた気持ちになりました
震災当時、津波の跡や倒壊した家がバンバンテレビに映し出され、余震もあって「この先どうなってしまうのだろう」と絶望的な気持ちでいっぱいでした しかし、約10年間の時を経て着々と復興しており、まるで大地震のことなんてなかったかのように感じることがあります この作品を観て、当時のことを色々思い出しました
ラストで大きな災害から世界を守ったシーン「行ってきまーす」「いただきます!」の描写があって、おそらくそこに住んでいた人たち(多分震災で亡くなった)の声がたくさん流れてきて、この記憶は絶対に忘れてはいけないなと思いました
前向きになると同時に、当時のことを風化させてはいけないという製作者側の意思を感じた
また、10年という時を経て、このような作品が世の中に出たことがすごいなと思いました
震災という重苦しいテーマをここまでエンターテイメントに昇華できる監督の手腕半端ないぞ…と感じた
個人的に消化不良だったところ
ダイジンが報われない
ダイジンって善悪の区別がつかない子供みたいな存在
自分を要石の役割から解放するきっかけを作ったすずめをとにかく気に入ります
すずめの言動で一喜一憂するダイジンの様子は本当に子供を彷彿とさせます
物語前半では「人がいっぱい死ぬよ!」等サイコパスめいたことを言っていましたが、観終わってから思えばダイジンはただすずめと一緒にいたかっただけで、邪魔な存在である草太に要石の役割を押し付けやっと2人きりになれた!と喜んでいたら「二度と現れんなカス!(意訳)」と言われて傷付くダイジン
後半パートで草太を救うシーンで「私が要石になる!」と言うすずめを見て心を動かされたダイジンは元の役割をまっとうすることに決めたのでした
視聴者としてはダイジンに感情が芽生え、キャラクターとして知ってしまったが故にただの要石として見れなくなってしまい、本当に悲しかった… 犠牲を産まずに戸締まりする方法はないんですか……
海部 千果ちゃんをもっと見たかった
この子やばくなかったですか?同い年なのにお姉さんキャラだったの好きすぎて…
すずめが言いづらいことは聞かないし、全てを全肯定してくれる優しいお姉さんキャラ…旅に出て一番最初に深くかかわったかつ優しくしてくれた子だったのでめちゃくちゃ良かった…
顔、声、性格…全てにおいて完璧なキャラクターだった
ラストのお礼行脚でまた彼女に会えて良かった…
【余談】
千果ちゃんを見ていると、「キルラキル」の満艦飾マコちゃんが脳裏を何度もちらついた
RADWIMPSが少ない
いや、厳密に言うとRADWIMPSが作曲しているから全然要素少なくはないんだけど、作中に野田洋次郎さんの歌も聞きたかったなぁという程度 前前前世的な入り方を期待していた でも挿入歌と映像がすべてがマッチしててめちゃくちゃ満足でした!特に「すずめ feat.十明」は壮大な神話のような雰囲気でめちゃくちゃ合ってた
まとめ
穏やかな2人に芽生えた恋心を描く物語…良かった!
今作の恋愛描写で一番好きなシーンは心の中ですずめへの恋心を自覚する草太のセリフです
2人の恋を応援したい気持ちでいっぱいになりました 王道でベタだけど、ベタなのが良い
だってボーイミーツガールだもん
ラストシーンですずめが母と同じ看護師の道を目指すべく勉強していることが分かり、応援したい気持ちでいっぱいでした
冒頭で慣れた手つきで草太のことを手当していたし、おそらく元々尊敬する大好きなお母さんと同じ職業になりたいという思いは漠然とあったんじゃないかな
ラストシーンでは冬服で草太と再会を果たすすずめ、マジでこの2人が会えてよかったし、同じ時間軸に存在しててよかった!笑
かなり賛否両論が分かれそうな設定ですが、個人的には楽しく観ることができました!
新海誠作品を観るには?
「U-NEXT」で視聴できる新海誠作品
・すずめの戸締り(冒頭12分)
・天気の子
・君の名は。
・秒速5センチメートル
・言の葉の庭
・星を追う子ども 等…
ブログ書きながら「君の名は。」を観返してやっぱ好きだなと思った